04 ごめんね、大好き。



「ごめんね、大好き」

―――この気持ちを伝えれば彼が困ることくらい、分かっていたはずなのに。




彼が説得する前に、彼女は急に結婚を承諾した。長く横に振り続けた首を、やっと縦に振ったのである。
国王は手放しで喜んだが、彼はどうしても腑に落ちなかった。
二人きりになった部屋で、彼女に問う。

「何故、・・・・・急に結婚する気になったんです・・・?」

「・・・・・知らなかったのよ。サディナが援助を持ち掛けてきているなんて」

しまった、と彼は思った。彼女が「そのこと」を知れば、国を救うために結婚してしまうだろうと思ったから、彼は話さなかったのに。

「私は、あなたが好き。でも、国を見殺しには出来ない・・・・・」

ぽろぽろと落ちる彼女の涙が綺麗だと、場違いなことを彼は考えていた。頭が真っ白になって、上手く考えることが出来ない。

―――誰が、誰を好きだって・・・・・?

「私ね、あなたが好きよ。これだけは、伝えておきたかったの。・・・・・ごめんね、大好き」

「・・・・・オレも、貴女が好きです」

「ありがとう・・・そして、―――お願いだから、私を忘れて」

「オレは、貴女の命令には従ってきました。でも、それだけは出来ません」

「・・・・・これは、命令じゃないの。お願い・・・・・」

「・・・・・貴女は・・・ずるい・・・・・」

―――貴方の『願い』を、オレは断れないと知っているんだから。

彼は指先でそっと彼女の唇に触れた。
彼女がぴくりと身体を強張らせたのが、傍目にも明らかだ。

「オレは忘れません。忘れるのは・・・・・貴女です」

唇に触れていた指をそっと彼女の額に移動させる。
彼が意識を指先に集中させると、すぐに彼女は意識を失った。




「あ・・・れ?私・・・」

彼女が目を覚ましたのは、見慣れた自分の部屋のベッドだった。

「貴女は、倒れたんです。・・・・・王に、結婚を受けると言った席で。このところお忙しいようでしたから、疲れが溜まっていたんですよ」

額に乗せられた冷たいタオルが、心地よい程度に、彼女の意識をまどろみからすくう。

「そうなの?良く覚えていないけど、私、あなたと何か話してなかった?」

「いいえ、・・・・・何も」

うつむく彼の、どこか悲しそうな表情の意味を、彼女は知らない。
彼女が目を覚ましたとき、彼女の、彼を思う気持ちは消え去られていた。
古から皇女直属の従者にのみ伝えられる、秘術によって。















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