02 忘れたくなんてない、でも、忘れないと苦しくて。
―――忘れたくなんて無い、でも、忘れないと苦しくて。
「どうにかなってしまいそう・・・・・」
「何がです?」
側に控える従者は、不思議な面持ちで問いかけた。
主従という関係にありながら、彼と彼女は仲がよかった。
小さな頃から城で一緒に育ったから、もう兄妹のような感覚なのだ。
「なんでもないわ」
「そう?じゃあ、まずは用件を伝えます。貴女の婚約予定者殿から、手紙が届いているそうですよ。中を確認させて頂きましたが、熱くて厚いラブレターでした。熱烈なアプローチですね」
「・・・・・読んだの?」
―――いつも通りの王子からの文面なら、この幼馴染の従者に見られるにはかなり恥ずかしい内容のはずだわ・・・・・。
「オレじゃないです。検閲の者が言っていました。そう怒らないで、それが彼らの仕事なんですよ」
極稀に郵便物を装って、毒や凶器が送られてくることもある。
そんな悪戯を防ぐため、この城に送られてくる手紙や品物は、担当の者に全てチェックされている。
熱くて厚いラブレターに目を通した彼女は、うんざりした顔つきだった。
「私、やっぱりこの人苦手だわ。趣味・・・というか雰囲気ね。私とは正反対」
「と、申しますと?」
「熱いのよ。何から何まで。そのうち燃え尽きるんじゃないの?」
彼女はぽんっと、手紙を従者に投げてよこす。
「読んでも?」
「良いわよ。一人に見られたなら、百人に見られても一緒な気がするもの。
そしてもしも慰めてくれるなら、早めに気のきいた言葉をお願いね」
―――手紙を読む彼の顔が、赤くなっていくのが面白かった。
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