「―――お願いだから、私を忘れて」
「オレは、貴女の命令には従ってきました。でも、それだけは出来ません」
「・・・・・これは、命令なんかじゃないの。お願い・・・・・」
「・・・・・貴女は・・・ズルイ・・・・・」
―――貴女の『願い』なら、オレは断れないと知っているんだから。
彼は指先でそっと彼女の唇に触れた。
彼女がぴくりと身体を強張らせたのが、傍目にも明らかだ。
「オレは忘れません。忘れるのは・・・・・貴女です」
唇に触れていた指をそっと彼女の額に移動させる。
彼が意識を指先に集中させると、すぐに彼女は意識を失った。
「・・・・・忘れられる辛さは、オレが負います」
―――貴女だけはどうか、思いに囚われることなく。
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